田中達也論。“Talk about TATSUYA” こぼれ話

「特別な時間~すべてはサッカーのために」では、田中達也ゆかりの方々から、田中達也についてのお話を伺いました。単行本のなかに収めきれなかったお話をここで紹介しましょう。単行本には田中達也から、お話頂いたみなさんへのメッセージも収録されています。

福田正博さん

 今季の達也はミッドフィルダーでプレーしているけれど、年齢を重ねてから、違うポジションでプレーできるというのは、大きなチャレンジでもあり、とても刺激的で新鮮なはず。

 必ずしも速く走ることが強みではないし、ゆっくり走ることで見えてくるものもたくさんあるから。過去は変えられないけれど、未来は“今”を変えれば、変えられる。今、このときに最善を尽くすことを続けるしかない。

 終わりを考えたら、パフォーマンスは落ちてしまう。達也にはこれからもがんばってもらいたい。

山田暢久さん

「帝京の10番が入ってくる。1年生のときから高校選手権に出ていた選手らしいよ」と聞いて、すごいヤツが来るだろうなって思った。だって、帝京の10番だから。そりゃ、どんな選手だろうって思うよね。でも当時の達也はガリガリで小さい選手。いわゆる“10番”というタイプじゃなかったけど、前線でのドリブルは、ドリブルだけは、悪くなかったよね。


本間勲選手(栃木SC)

 移籍加入した選手が早くクラブに馴染んでほしいから、よく食事に誘ったりするんです。達也の家にも子どもがいて、うちの子と同じ年齢だと聞いたので、「家族を食事に誘おう」と思っていたんですが、やっぱり最初はなんだか誘いづらかったですね。

「浦和レッズの田中達也」ですからね。大物選手っぽい雰囲気があるとこっちが勝手に考え過ぎた部分もあったから。でも、一度食事をしたらすぐに家族ぐるみで仲良くなりました。

山瀬功治選手(京都サンガ)

 僕が加入したころの浦和レッズには、達也だけでなく、(鈴木)啓太や長谷部(誠)、(田中マルクス)闘莉王がいて、同じ世代の仲間で繋がりは強かったし、みんないっしょに強くなっているという感覚がありました。
 でも同時にライバルだという意識もあったから、相乗効果みたいな形で成長できたんだと思います。
 レッズでともにプレーした選手だけでなく、僕らアテネ五輪世代は“谷間の世代”と言われていたけれど、息長くプレーしている選手も多い。雑草だから、しつこいんですよ。踏まれて、踏まれて、ここまで来ていますから。

長谷部誠選手(フランクフルト)

 去年、久しぶりに田中達也一家と会ったんだけど、僕への扱いが、ちょっと丁寧になったような気がした。

 今、考えると達也が居なかったら、俺はどうなっていたんだろうなって思う。

 

柏木陽介選手(浦和レッズ)

 浦和レッズへ来た最初のシーズンで、高原直泰と田中達也の2トップの下でプレーしたかった。浦和へ来るまえにそういう期待も自分のなかで抱いていたので、それが実現できなかったのは本当に残念です。

 達也さんは感覚でプレーするところがあって、僕もそういうところがあるので、わかり合えたと思うし、いっしょにもっと長くプレーしたかった。

東口順昭選手(ガンバ大阪)

 家事は奥さんが一手に引き受けているし、ストイックにサッカーに取り組んでいる達也さんの姿を見ていると子育ても任せっきりなのかと思っていた。でも、それは大きな間違いで、子どもとの関わり方が密接でそのギャップに驚きました。
 河原で長女のサッカーの練習、ドリブルの特訓をしたり、マラソン大会でいっしょになって走ったりとか、運動会とかそういうイベントでは本当に達也さんは熱くなる。
 もちろんそれ以外でも普段からすごくたくさん子どもたちと会話を重ねているし、しつけの面でも厳しいんです。
 僕ももっと家庭に関わらなくちゃいけ ないと、達也さんを見ていると思いました。

大野和成選手(アルビレックス新潟)

 プライベートでもよく食事に呼んでいただいたりして、奥さんや子供たちとも仲良くさせてもらっています。達也さんは娘さんのサッカーに対してとてもスパルタなんです(笑)。ドリブルとかシザースとか「毎日練習しろ」って言っている姿は、とても厳しいコーチみたいなんですよ。

小塚和季選手(アルビレックス新潟)

 達也さんはピッチ内とピッチ外とでは、まったくキャラが変わります。ピッチ外ではお茶目な部分もたくさんあります。後輩をイジったり、後輩にイジられたり。みんなから愛されるイジられキャラです。でも、僕はイジったりはできません。僕がそんなことしたら、キレられます(笑)。
 そして、ピッチに立つとそのひたむきさがすごいなって思います。常に向上心を持っているのが伝わってくるんです。だから、サポーターに愛されるんですよね。僕もそういう選手になりたい。

 達也さんはファンに対しても丁寧で、ファンサービスでも手を抜かない。口でいうのは簡単ですけど、ちゃんと実践している達也さんはすごいなって思うんです。

 

神田勝夫強化部長(アルビレックス新潟)

 アルビレックス新潟がJ1に上がった直後の数シーズン、結構達也にやられました。すばしっこくて、うちの選手が明らかに嫌がる選手でした。その後、怪我もあり、浦和レッズを出ることが決まり、アルビと契約をすることになったとき、アルビを苦しめたあのスタイルを新潟で甦らせることができたらと思いました。クラブにとっても達也にとってもチャレンジだったけれど、あの姿をもう一度、達也に味あわせてやりたいと考えたのは事実です。

阿部勇樹選手(浦和レッズ)

 この間は腰を痛めたって聞いたけど、これまでの経験で自分の身体の状態っていうのは、わかっているだろうし、無理をしないことも学んでいると思う。

 今年は試合にも出ているし、達也が活躍してくれたら、俺にも刺激になるからね。
 そういえば、達也、髪の毛を短くしたよね。俺はロン毛よりも、今の短い髪の達也の方が好きだよ。

田中隼磨選手(松本山雅)

達也の浦和レッズ最後の試合の相手は当時、俺が所属していた名古屋グランパスでした。なんだか不思議な縁を感じました。試合後は、達也の家族と食事をして、そのまま家に泊めてもらって。

そのときはまだ移籍先が決まっていなかったし、「新しい環境でうまくやっていけるのか?」と思ったけれど、新潟へ行き案外すんなりとチームに馴染めているので安心しました。

木島徹也選手(カマタマーレ讃岐)

 帝京高校サッカー部に入部して、ビックリしたのは、数か月前の高校選手権決勝戦にも出場していた達也さんが懸命に自主練習をしていたこと。「もう試合に出ていて、そうとう上手いのにこんなに練習をする必要はないんじゃないか」と思ったんですが、気がつくと僕もいっしょに居残り練習をするようになりました。

 何時間もあきれるくらいにドリブルを繰り返した自主トレの経験がプロになった今でも僕の心の拠り所になっています。

梅崎司選手(浦和レッズ)

 僕が試合に出て、達也さんが出られなかったときでも、「今日はよかったな」とかいろいろとアドバイスをしてくれた。感性が似ている部分があるから、達也さんのアドバイスやプレーはとても参考になり、ありがたかったです。

 達也さんはとても大好きな先輩だから、浦和レッズ退団セレモニーの達也さんの挨拶にも感動したし、今思い出してもこみあげてくるものがあります。あのときはセレモニーだけじゃなくて、送別会でも本当にメッチャ泣いてましたからね、僕。泣きながら話してた。

小林裕紀選手(アルビレックス新潟)

達也さんは、若い選手が手を抜いていたり、サボっていたら、それは自分にとってラッキーなことだと思っている。それってすごいことだと思うんです。だって、年齢に関係なく実力勝負というプロの世界で、いかに競争相手に勝てるかをずっと考えているということだから。どんなに仲が良くても、ピッチに立ったらライバル。そういう意識を持っているんです。
 そういうプロ意識を持った達也さんは、新潟というチームのなかで先頭に立っている人。達也さんがガツガツやったら、僕らも絶対にやらなくちゃいけない。そういう気持ちにさせてくれる人だから。

鈴木武蔵選手(アルビレックス新潟)

 達さんはボールをもらう動きが、すごく上手いんです。常に半身で、ボールを持っている人を見ながらパスを受けるんです。だから、相手の逆を突くのが上手い。それを俺ができるようになったら……と思って練習から見ています。勉強になりますね。
 達さんはパサーに「ダイレクトでパスを出してくれ」と要求していて、その速いタイミングでパスを受けられたら、動き出す瞬間に相手の裏がとれるんですよね。だから、U-23日本代表でも「ダイレクトパスを」と要求したんです。それでこの間の大会でも得点を決められました。達さんの姿から学んだことで成果が出ているんですよ

坪井慶介選手&山田直輝選手&岡本拓也選手(湘南ベルマーレ)

山田 達也さんも子どもに厳しいけど、ツボさんも相当厳しいなぁって思いますね。
岡本 達也さんちは上のふたりが女の子、ツボさんちは男の子ですよね
坪井 達也とうちは上のふたりの年齢も近いんだけど、うちは男の子だったからね、厳しかったかもね。
岡本 で、ツボさんちに娘さんが生まれて、達也さんは息子さんが誕生。
山田 やっぱり女の子は息子さんみたいに厳しくできないですか?
坪井 いやぁ~そんなことは~
岡本 でも、ツボさんが娘さんを叱っているのってほとんど見たことがないですよ。
山田 息子さんを怒っているのは見たことあるけど。
坪井 だから、もう娘のしつけは奥さんに任せた。
山田 達也さんの気持ちがわかりましたね(笑)。

原口元気選手(ヘルタ・ベルリン)

 ドイツへ来て、少しは達也さんに近づけているかな。達也さんが見たら「まだまだ足りない」って言われるのかもしれない。でもプレー以外の面では「変わったな」と言ってもらえると思います。

 プレ―の面では達也さんから見たら、「もっとドリブルしろよ」と言われると思うけど。今は、ここで試合に出続けるために、監督の要求に応えるために自分の足りないところを埋めているところ。

 これから先、達也さんも楽しんでくれるようなドリブルをドイツでも表現し、勝負したいと思っています。